栗駒山紅葉登山:中央コースから東栗駒山周回、錦秋の稜線と火口湖を望む中級者ルート詳細解説
はじめに
東北の紅葉名峰として名高い栗駒山は、その山容全体が錦に染まる秋の姿が多くの登山者を魅了します。特に、中央コースから東栗駒山を経て周回するルートは、多様な植生と景観の変化を楽しみながら、山頂からの雄大な展望、そして特徴的な火口湖を眼下に収めることができる、中級者向けの充実したコースです。今回は、この魅力的なルートについて、詳細な情報と実践的なアドバイスを提供いたします。
栗駒山 中央コース~東栗駒山周回コース概要
このルートは、比較的人気の中央コースで山頂を目指し、その後、東栗駒山へと続く稜線を縦走し、東栗駒コースで下山する周回ルートです。山頂付近の広大な紅葉の絨毯、そして火口湖「御室沼」の眺めが特に印象的です。
- 総距離: 約6.5km
- 標準コースタイム: 約4時間30分~5時間00分(休憩含まず)
- 累積標高差: 上り約550m、下り約550m
- 難易度: 中級者向け(Cランク:登山経験があり、ある程度の体力と技術を要する)
- 例年の紅葉見頃: 9月下旬~10月中旬
アクセス情報
登山口: いわかがみ平
- 車でのアクセス:
- 東北自動車道 築館ICより国道398号線、県道42号線を経由し、いわかがみ平へ。約1時間20分。
- 駐車場は、いわかがみ平に複数箇所ありますが、紅葉シーズン中は非常に混雑します。早朝到着を強く推奨します。満車の場合は、周辺の臨時駐車場も利用できますが、シャトルバス運行の有無を事前に確認してください。
- 公共交通機関:
- JRくりこま高原駅から、栗原市営バス「いわかがみ平行き」が運行されますが、本数が少ないため、事前に時刻表の確認が必須です。紅葉シーズン限定で臨時便が運行される場合もあります。
詳細ルート解説
1. いわかがみ平~中央コース登山口(約20分)
いわかがみ平の駐車場から、案内板に従い中央コース登山口へ向かいます。この区間は比較的なだらかな道が続き、ウォーミングアップに適しています。周囲の広葉樹が既に色づき始めている様子を眺めながら進みます。
2. 中央コース登山口~栗駒山山頂(約1時間30分)
中央コースは比較的なだらかな序盤から始まり、次第に傾斜が増していきます。
- 序盤: 針葉樹と広葉樹が混在する森の中を歩きます。足元には苔むした岩が多く、湿り気のある場所では滑りやすいことがありますので、慎重に進んでください。
- 中盤: 標高を上げるにつれて、ダケカンバやナナカマドの紅葉が視界を彩り始めます。火山性の礫地となり、樹林帯を抜けると展望が開け、眼下に広がる錦秋の絨毯が圧巻です。このあたりから風が強くなることもあるため、防寒対策を怠らないようにしてください。
- 終盤: 山頂手前は岩がゴロゴロとした急な登りとなります。道幅が狭い箇所もありますので、譲り合って安全に登りましょう。山頂直下の岩場は足元に注意が必要です。
3. 栗駒山山頂(標高1,627m)
山頂からは360度のパノラマが広がります。遠くは鳥海山や蔵王連峰、太平洋まで見渡せる日もあります。特に眼下には、見事に色づいた山肌と、紺碧の水を湛える火口湖「御室沼」が望めます。この絶景は、登りの疲れを忘れさせるほどの感動を与えてくれるでしょう。山頂は岩場が多く、休憩に適した平坦な場所は限られています。風が強いことが多いので、体温を奪われないよう速やかに防寒着を着用してください。
4. 栗駒山山頂~東栗駒山(約40分)
山頂から東栗駒山への縦走路は、比較的アップダウンの少ない快適な稜線歩きです。しかし、一部に足元の悪い岩場や、風の影響を受けやすい箇所もあります。
- この区間からは、栗駒山の裏側ともいえる、これまでとは異なる角度からの紅葉の景観を楽しむことができます。ナナカマドやミネカエデの鮮やかな赤が特に目を引きます。
- 東栗駒山への道中には、いくつかの小さなピークを越えますが、全体的に展望が良く、写真撮影には絶好の機会です。
5. 東栗駒山(標高1,644m)
東栗駒山は栗駒山よりも標高が高いですが、山頂標識が設置されているのは栗駒山です。東栗駒山からは、御室沼を挟んで栗駒山山頂を望む素晴らしい眺めが楽しめます。特に、御室沼と紅葉のコントラストは、このルートならではの絶景です。
6. 東栗駒山~東栗駒コース合流点(約1時間00分)
東栗駒山から東栗駒コースを下山します。このコースは中央コースに比べて傾斜がきつく、特に序盤は急な下りが連続します。
- 足元が滑りやすい礫地や、整備された木道が濡れている箇所などがありますので、慎重に下ってください。ストックの使用が有効な区間です。
- 谷筋を下っていくため、周囲の紅葉がより間近に感じられます。
7. 東栗駒コース合流点~いわかがみ平(約1時間00分)
東栗駒コースの合流点からは、再び比較的なだらかな道となります。沢沿いを歩く区間では、清らかな水の音に耳を傾けながら、最後の紅葉を楽しんでください。疲労も蓄積されている頃ですので、足元をしっかり確認しながら安全に下山しましょう。
紅葉の見どころと写真スポット
栗駒山は「神の絨毯」と称されるほど、広範囲にわたる紅葉が特徴です。
- 中央コース中腹から上部: 樹林帯を抜けたあたりから、登山道脇に広がるダケカンバ、ナナカマド、ミネカエデの広大な紅葉の絨毯は圧巻です。特に天気の良い日には、太陽の光を受けて鮮やかに輝きます。
- 栗駒山山頂からの御室沼(おむろぬま): 山頂からは、五月病などの火山湖とは異なり、青く澄んだ御室沼と、その周囲を彩る紅葉のコントラストが絶景です。広角レンズで周囲の山々と共に撮影すると、雄大さが際立ちます。
- 東栗駒山からの栗駒山山頂: 東栗駒山からは、御室沼を挟んで栗駒山山頂の全景を望むことができます。この角度からの景色は、栗駒山全体の紅葉の豊かさを感じられる写真が撮影可能です。望遠レンズで特定の紅葉の塊を切り取るのも良いでしょう。
- 東栗駒コースの谷筋: 谷を下るにつれて、より間近に紅葉の木々を撮影できます。特に、光が差し込む時間帯には、葉の一枚一枚が輝き、幻想的な写真が撮れることがあります。マクロレンズで葉の質感や水滴を捉えるのもおすすめです。
撮影のヒント: * 早朝の斜光は紅葉の色をより鮮やかに引き立てます。可能であれば、日の出直後の時間帯に山頂に到達できるような計画を立てると良いでしょう。 * PLフィルターを使用すると、葉の反射を抑え、紅葉の色をより深く表現できます。また、空の青さも強調されます。 * 天候が変わりやすい山岳地帯のため、防水・防塵性能の高いカメラ機材の携行をお勧めします。
難易度評価と注意点
このルートは中級者向けであり、ある程度の登山経験と体力を要します。
- 体力: 標準コースタイムは約5時間と記載しましたが、これは休憩を含まない時間です。高低差や足場の悪い箇所も多く、日頃からのトレーニングが必要です。
- 装備: 紅葉時期の山は、平地と比べて気温が低く、天候も急変しやすいです。防寒着、レインウェア(上下セパレート型)、防風シェルは必須です。登山靴は足首を保護するミドルカット以上で、グリップ力の高いソールが推奨されます。行動食、水分(最低1.5リットル)、ヘッドライト、地図とコンパス(またはGPSアプリ)も必ず携行してください。
- 水場・トイレ: コース上に飲用できる水場はありません。いわかがみ平にトイレと売店があります。
- 危険箇所: 中央コース終盤の岩場、東栗駒コースの急斜面は特に足元に注意が必要です。雨天時や残雪期は滑落のリスクが高まります。
- 混雑: 紅葉シーズン中の週末は、駐車場から登山口、そして登山道全体で大変な混雑が予想されます。早朝出発を心がけ、時間に余裕を持った行動を計画してください。
- 日没時間: 秋は日没が早く、山の中ではさらに早く暗くなります。ヘッドライトは万が一の際に備え、必ず携行してください。
まとめ
栗駒山の中央コースから東栗駒山を周回するルートは、変化に富んだ景観と壮大な紅葉を心ゆくまで堪能できる、素晴らしい登山コースです。山頂からの御室沼と紅葉のパノラマは、一度見たら忘れられない感動を与えてくれるでしょう。詳細なコース情報と適切な準備をもって、この錦秋の栗駒山歩きを安全にお楽しみください。